現代人は悩んでいる。疫病対策はできるようになってきたが、その代わりに癌、鬱病、自己免疫疾患、肥満、不安などに襲われている。この本は、これらの現代病・文明病が生じる原因を人間の進化から考えて、医学的に有効なテクニックや考え方を集めている。
現代病の原因を進化論の観点から考える医学のことをダーウィニアン・メディスンというらしい。日本語だと進化医学。現代の人々は、定住し、お金を稼ぎ、コンピュータを使い、スマホに依存して生きている。この環境の変化は長い人類の歴史の中で、とても急激に起こった出来事である。この急激な変化に対して、体や心がうまく対応できず、不適合になっている。その結果、病気が生じたという仮説だ。
都市にいる現代人と対比されるのが、いまだに森の中で生きる狩猟採集民である。かれらは、都市で生活する人より労働時間が少なく、不安が少なく、(病気などにはかかるが)、癌や鬱病になりにくい。この本では、この対比や科学的な研究結果をうまく引用して、文明病に有効な対処法をとても具体的に提案している。
例えば、腸内環境をよくすること。そのために、空気清浄機を買ったり、ビフィズス菌を買うこと。また、現代病の大きな原因になっている不安から回復するために、自然や友人を大事にすること。具体的には、毎日30分公園に行くことや、友人と一緒に過ごす時間を増やすこと等々である。
他にも、生きる上での考え方に関わる多数の提案もあり、全くの偶然だが、個人的にも意識していたり、やっていることが多かった。特に、この本の後半にある価値観を重視して生きたり、行動を遊び化するというのはかなり意識してやっていた。個人的には、かなり効果があると思う。
これらの具体的な提案はありがたいが、もちろん、全員がこの提案でうまく行くわけではないことに注意だ。特にマインドセットに関わることは、教えられたからやるというやり方では、うまくいかないだろう。自分で見つけ出した感覚を養わないと、効果が弱いと思う。
また、注意が必要なテクニックもある。
特に、数字に関することに関しては、特別な注意が必要だと考えている。人は数字にコントロールされやすい。自己評価するときに自分が設定した評価基準で数字を使うのであれば意味がある。が、他人の設定した評価基準を元にした数字による評価は、そのまま受け取らないことだ。他人からコントロールされることになる。
そして、数字は簡単に誤魔化すことができる。それは、国の統計が誤魔化されてきたことを見ても明らかである。数字を元にしたコスパ至上主義は、ここにきて破綻が目に見えてきた。数字の上げ方で、最もコスパの良い方法は、バレないように嘘をつくことなのだ。(方法が稚拙なので徐々にバレてきたが)。
数字を目標にするとまずいということだ。数字は参考資料である。それ自体には意味がない。
数の呪縛から自分を解放して、進んで行くときには自分の道しるべが必要になる。原因不明だがなぜか調子が悪い。現代人が抱えるこのやっかいな問題の原因を自分で探り、「最高の体調」で楽しく生きていくための手がかりとして、この本は参考になる。そして、自らの道しるべを作っていくのが良いのではないだろうか。