2018-02-18 都留泰作 — ムシヌユン
ナチュンを書いた都留泰作の漫画だ。相変わらず、というか、今回の方が人にはお勧めしにくいけれども、結構面白かった。
舞台は沖縄本島からさらに南西、西表島近くの架空の離島、ヨナセ島。
ひたすら虫が好きな青年が童貞のまま大学院に落ち続けて、卑屈にひねくれている。その青年が、性欲に突き動かされ、時に抗い、物語が進んでいく。それに、未知との遭遇、宇宙人の侵略、パンスペルミア説、南国の開放感、各国の主導権争い、国内政治の争い等々が混ぜ込められて、何か訳のわからない面白さを生んでいる。もうちょっと具体的に言いたいけど、うまくストーリーを表現できない。物語は最初はゆっくりと進んで、土地の風俗とか文化とかを楽しむ余裕があるが、あるところから急加速して一気にクライマックスまで進んでいく。
メインストーリーは、性欲に翻弄される主人公と宇宙人の侵略なんだろう。ただ、なんと言えばいいのか、宇宙人の侵略も、普通に映画等でイメージしてるものではない。
宇宙人はDNAだけの存在だし、そのDNAは地球の虫にインストールされ虫を変形させる。さらに宇宙人は、作り出した衛星を使って太陽をブラックホール化させて、地球も変形させ太陽に突入させようとする。そして、ワープし、次の恒星で同じことを行おうとする。その目的は自分自身(DNA)を宇宙全体に巻き散らかすだけである。
さて、人間もそういった意味では同じだろう。DNAを巻き散らかしていくのが目的である。その目的から反する存在もあるが、本質はそれだ。そのために性欲が存在し、体を駆動する。性欲に翻弄される主人公はまさに、それを表している。体は遺伝子の乗り物である。利己的な遺伝子というやつだ。では、遺伝子だけで撒き散らしていく存在があってもいいのではないか、これを物語で表したと都留は6巻扉絵のところで言っていた。
最後に人類はブラックホールと化した太陽に突入し滅亡するかと思うその間際、主人公とその憧れの人とのセックスによって、太陽系から30億光年離れた銀河系にワープし、救われる。
どうやってこんな話を思いつくのか、甚だ理解しがたいが、ただ無関係にごっちゃ煮にしたのではなく、この著者の興味のあることを詰め込んで、料理していったことが感じられる。著者は兼業作家で、本業は比較人類学者でどこかの大学の教授らしい。なんというか、興味が発散している。その発散する興味を形あるものにまとめるために漫画を書いている、そんな気がしてくる。
積極的にはお勧めしにくい漫画だけど、表面のひねくれエロ馬鹿騒ぎだけでない面白さ。完結したので興味がある人はどうぞ。それにしても、最終巻6巻の帯が新海誠だった、ムシヌユンを読んでいたとは。