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マーティ・O・レイニー – 内向型を強みにする

今日久しぶりに紹介するのは、マーティ・O・レイニーの「内向型を強みにする」という本だ。原題は「The Introvert Advantage」。まさに「内向的な人の有利な点」とは何かを書いている。自分が内向的な性格なのもあるが、とても面白かった。

通常、内向的な人は外交的な人より仕事で評価されにくい。外交的な人よりプレゼンが下手で、行動が遅いために、手柄が目に見えにくいからだ。従って、内向的な人が仕事で悩んでいたら、内向的な人が向く職業(芸術家や小説家等)につきなさい、or 頑張って外交的な性格になりなさい、という結論になってしまう。しかし、この本ではそのような安直なアドバイスはしない。

内向的な人には、外交的な人にはない普遍的な価値があると言うのである。それはなんだろうか。

「内向的な人」に新しい価値を見出すためには、まず言葉の持つネガティブなイメージ(ネクラ・遅い・引きこもり等)を払拭する必要がある。そこで、はじめに内向的な人の持つ隠れた特徴を明らかにして、「内向的な人」を再定義しよう。レイニーさんによれば

内向的な人とは、自分の中を観察し向き合い理解することでエネルギーを得る人のことである。

これは驚きの解釈で、今まで聞いたことがなかったが、言われてみればそうだと納得出来る。確かによく考えると、自分がブログを書くのは自分がエネルギーを得るためかもしれない。別にたいした報酬があるわけでもないし、特定の人とコミニュケーションするためにやっているわけでもない。目的は単純で、自分を理解し自分の考えを自分で記録するためだ。そうすると頭がすっきりして、他の行動を取りやすくなる。ちなみに外交的な人はその逆で、「自分の外を観察し向き合い理解することでエネルギーを得る」のである。

このエネルギー補給の仕組みを理解すれば、取るべき行動方針が自然と明らかになる。

内向的な人がまずはじめにやるべきことは、自分と向き合ってエネルギーをためることである。人によって方法はいろいろ違うと思うけど、とりあえず何かを書いて、自分の考えやアイデアをまとめるのが手っ取り早いんじゃないかと思う。自分の場合は、「何が重要か」、「何が自分に取って楽しいか」、がクリアになればなるほど、自分のエネルギーがどんどん湧いてきて、外に向かう活動もできるようになる。

内向的な人がエネルギーをためる前に外に向かうと自滅する。行動するためのエネルギーが足りないのである。外交的な人がエネルギーを補給できる「外での様々な経験」「新しい人と出会い
」「コミニュケーション」は、内向的な人にとっては、自分のエネルギーをどんどん減らしていくことにつながる。

仕事の目標は通常外部から与えられることが多い。このとき、例えば、エネルギーをためるためにまず自分と向き合い、あたらめて「なぜ自分がそれをやるのか」を考えてまとめるといいんじゃないかと思っている。もちろん、これは「やらなきゃいけないから」とか「仕事だから」ということを確認するためじゃなくて、「自分の内部規範に照らし合わせて考えると、なんのために仕事をするのか」ということを知ることだ。まとめる作業からエネルギーを得ることができ、さらに動機づけも行えるので次の行動への方針が明確になる。内省を行わないと、次に何をすればいいかわからなくなり、進みが遅くなり、よけいに焦って終わらない。

「何をやるか」「どうやるか」より前に「なぜやるか」を考える。

最近これを意識して仕事しているけど、このやり方が自分に当てはまる理由がやっとわかった。自分が内向的だからだ。

だけどしかし、内向的な人はエネルギーをためるステップが余分に必要なので、仕事においてはやはり、外交的な人に比べて不利なのではないかという疑問が湧く。が、実はそうではなく、内向的な人が有利になる点はまさにここなんだな。自分の内部と向き合うことで、自分のオリジナルなアイデアが生まれ、現状に変化を与えることができるわけだ。

外交的な人はどうしても現状の基準や慣習に縛られやすい。基準・慣習に従って、すぐに「何をやるか」「どうやるか」を決めてしまいがちだ。基準がすでに明確にあると早く仕事ができて有利にみえるが、基準自体に変化が必要な場合に対処できない。今の時代は基準が揺らいでいて、流動化した状況に対処しなければならなくなってきている。

基準に縛られない内向的な人は、流動的な時代に新しい方向を与えることができる。

仕事とは基本的に問題解決である。経験的に、特に問題が複雑で新しい場合は、まずはじめに「なぜやるか」を考えるほうが、早く問題の本質に到達できる。難しい問題は最初は漠然としていて、つかみどころがなさそうに見えるけど、「なぜやるか」はとっかかりを作ってくれんだ。「なぜやるか」がはっきりしてきたら、「何をやるか」「どうやるか」は自然と導き出される。

もちろん、内省だけで終わっていてはもったいない。自分の中にある面白いアイデアを形にして共有可能にしよう。これは社会にとっても良いが、それ以上に自分にとっても良いことだ。自分が提供する価値を既存の基準の文脈の中で説明することで、より多くの人に自分を理解させ、価値を認めてもらうことができるから。

共有するためには、外に出かけて、自分を既存の文脈を使って表現することが重要だ。

そこで、外部基準がどうなっているか、なぜその基準が存在するのかをある程度理解しよう。それには溜めたエネルギーを使って、多数の人と会話するのが早い。一番いいのは、最も苦手とする人と会話することだ。そんな人はきっと基準の権化のような人なんだから、一番大きなフィードバックをくれるはず。その次に、基準と自分のアイデアの関係性についてもう一度考える。外とコミニュケーションを取るのは気乗りしないけど、やってみると、自分のアイデアを言葉で説明できるようになるし、さらに自分が自分をより深く理解出来るというおまけまでついてくる。

内向的な人は行動が遅く自分を卑下しがちだ。けど、読んでみて欲しい。「内向的な人」の新しい解釈を知るだけでも勇気と自信が湧いてくると思う。