石橋克彦 – 大地動乱の時代

2011年3月11日に起こった東関東大震災から約1年半。そろそろ日本全体も通常営業状態になってきた。だけど、原発の問題は収束していないし、今後の大地震の可能性も大きい。そこで、過去の大地震時の様子や、地震行政について知りたくなった。

そこで、今日紹介するのはこの本。


大地動乱の時代―地震学者は警告する (岩波新書)

著者は石橋克彦、地震学者だ。出版は1994年。

リスク管理を考えるときに、起こる確率の低いものは、コストとトレードオフして無視されてしまう。だけど、どんなに確率が低くても発生したら甚大な被害が生じる特異点的リスクが存在する場合がある。例えば、今回の津波による原発の全電源消失がそうだ。

序論で過去の活動期である幕末から関東大震災までの流れを概観し、その中で、権威と特異点的リスクの関係がはっきりと書かれている。

人は特異点的なリスクを過小評価する傾向にある。

当時の東大の地震研究室には大森教授と今村助教授がいた。この二人の態度が対称的で、面白い。

今村助教授は近頃(1890年)頻発している地震は、将来来る巨大地震の前触れであると指摘していた。この発表は週刊誌に利用され社会が少し混乱した。一方それをまったくありえないデマだと断じたのが大森教授である。

大森教授は明らかに社会的地位が高く、海外を含む様々な学会や天皇の即位式に呼ばれるほどである。このような人は今ある社会構造を変えたくないので、リスクを過小評価する。

一方、今村助教授のポストは無給だったらしい。地震の発生メカニズムについての学術的な議論においても、社会の色がつき、社会的にはより権力をもっている方の意見が通る。結果として、それほど地震に対する備えは進まなかった。

政治に近い分野では、必ずしも学術的に正しい方が社会的に評価されるわけではない。社会的に都合が良いほうの理論が政治に採用され、裏付けとして使われることもある。

しかし、関東大震災は生じ、今村助教授の言っていたことは正しかった。

今回の地震とそれに伴う原発の問題はまさにこの構図だ。上杉隆などのフリージャーナリス卜と大手新聞社・テレビの記者の違いが、地震直後にはっきりと現れた。危険性を指摘して行動するように促したフリー陣営と、安全安心を連呼した政府寄り陣営だ。

今後の地震についても、いろいろ記述がある。この本では、東海、南海、小田原地震が1995年から2015年までに生じると予測していた。これらの地震が過去400年にわたって70年周期で地震を起こしてきたからだ。

特に関東の地震は活動期と停滞期があり、高度経済成長期は地震の停滞期と重なっていた。しかし、今後は日本は地震の活動期に入るから、地震への備えが重要であると指摘している。

この指摘が阪神淡路大震災の前に行われている点は特筆すべき点だ。3月11日に東北で地震が起きたが、今現在、まだ小田原地震は生じておらず、東京直下の地震もまだだ。今後、さらに巨大地震が生じる可能性はある。

地震は東京一極集中のリスクの高さを証明したと思う。これを解消するためには遷都もしくは道州制があるが、実現するかな?。

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