Graham, Paul – ハッカーと画家

ハッカーと画家という一見大きく異なる職業には、実は共通点がある。

創造的な仕事とは何かということについて論じた小論を含む、Paul Grahamの短編集。深い洞察が面白い。


ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち

WEB上の無料翻訳

ハッカーはプログラムを書くことが好きだし、新しいプログラムを生み出すことは創造的な仕事である。創造的な仕事は最初から全体像がみえている訳ではない。手順書はないわけだ。さて、じゃあどうやって作るのか?Just do it!これしかない。まずはプロトタイプを作ろう。

プログラムにおいて”早すぎる最適化”は悪い結果をもたらす。最初からプログラムの全体像が分かっているわけではない。書きながら思考し、進化していく。最適化をプログラムの初期段階で行うと、本来もっといいものができていたかもしれないのに、その可能性をつぶすことになる。

これは、油絵の描き方に似ている。まず全体をスケッチし、外観をとらえる。その後、薄い色から塗り、徐々に重ねて色を付けていく。ここでは、いつでも修正可能である。つまり、学びながら完成に向かうわけだ。学び終わってから作品を完成させるわけではない!

創造的な仕事というのは、この絵描きの仕事の側面をどこかに含んでいるものである。まずやってみて、プロトタイプを素早く作る。その後、それを改良していく。プロトタイプ作成の時間が短ければ短いほど、その後の改良に時間をかけることができて、作品の完成度が上がる。またプロトタイプ作成の間にも学習し、何が本質か、どういった形に持っていくかということが頭の中で形づけられていく。

想像力を膨らませることができるようなプロトタイプは最高だ。その後の変化も大きくなり、最終的には最初想像もできなかった素晴らしいものが完成する。

ハッカー、画家、科学者、映画監督、小説家etc.どの仕事も創造するという点では、みな同じである。創造に必要なものは一つだ。想像力。最初から最後までの細部について、一続きの物語として工程を想像できれば、あとはそれを実行するだけだ。

仕事道具も重要だ。なぜなら創造者にとって、道具は単なる作業の補助のための機械ではなく、想像力を助けてくれるものだからだ。良い道具を使うと、想像力の限界を軽くぶち破ってくれる。低レベルの雑務から頭を開放し、思考の段階を一段、二段上にあげてくれる。

整理整頓しすぎても、うまくいかないのかもしれない。常に完璧に整理整頓していることは”早すぎる最適化”をもたらす。これは情熱を減らす。プロトタイプ作成には情熱が必要だ。一つのものに没頭した場合、全体が雑然となるのはしかたがない。分類は最低限で十分だ。分類学は必要ない。情熱と整理は二律背反の関係にある。

科学者は、習作を作ってからオリジナルに向かうのに対して、画家はオリジナルから技術を向上させるといった点で違いがある。それでも科学者にとって、慣れていない初めての仕事は多い。新しい研究は常にそうだ。情熱は没頭することで生まれる。没頭するためには、最初の一歩を踏み出さなければならない。Just do it!オリジナルをそのまま完成品としないでもよい。オリジナルを発展させたものを完成品として出せばよい。

そして最後に。情熱が持続する時間はうんと短い。仕事はなるべく早く終わらせること。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です